2008'09.17.Wed
十五夜に合わせようと思っていたのに、全然間に合ってない上に短い&すげー途中だ orz
ボツにしようかとも思ったんだけど、そうすると延々と書かずにいそうなので無理やり公開。
もうね、ダメですわ……作文機能が死んどります;
復旧したら(できたら?)、続きを書いてみるっす。
ボツにしようかとも思ったんだけど、そうすると延々と書かずにいそうなので無理やり公開。
もうね、ダメですわ……作文機能が死んどります;
復旧したら(できたら?)、続きを書いてみるっす。
深い夜の闇の中にぽっかりと浮かぶ月は、まさに白い円盤になって美しい面を地表へ向けている。
つややかな葉に白々とした光を照りかえし、ざわざわと夜風にゆらめく木々。
広々としたテラスの間をゆるやかに蛇行しながら横切る石組みの水路の中には、涼やかな音を響かせる清らかな水が満ち、滔々と流れる水流はやがてきらめく飛沫に包まれた瀑布となって下層へと滑り落ちていく。
夜になってもなお甘い香りをただよわせる花々の生垣や、大ぶりの花房がたれさがる緑の回廊、小さいながらもすり鉢状の観客席と丸い舞台をかねそなえた野外劇場緑などが作りつけられている広大な庭園。
初めてそこを訪れた者は、この美しい庭園が、人の手によって建造された高層ビルの一角―――地表をはるかに離れた空中に存在するもの―――であると信じられず、わざわざ敷地の端まで赴き、覗き込んだ下に小さく見えるアルケイディスの街並みを目にして、ようやく納得するのだ。
だが残念なことに、この庭園を目にすることができる者は限られていた。
アルケイディア帝国を統べる皇帝の居城。
帝都アルケイディスの中央にそびえ立つ皇帝宮に存在する“空中庭園”
皇帝のゆるしなく立ち入ることが許されない聖域。
まして、夜ともなれば、警備の衛兵か、やんごとない理由で足早に通り抜ける家臣以外に踏み入るものが無い場所であったが、その夜は少しばかり勝手が違っていた。
数人の使用人たちがあわただしく、宮殿の中と庭園との間を行き来している。
月明かりが降り注ぐ石畳の上、ゆったりと弧を描く水路のすぐそばに一卓の丸テーブルと二脚の椅子がしつらえられ、ワインをはじめとする酒と、軽い食事が運ばれてくる。
「いやいや、それはもう少し岸辺へ寄せるのだ。明かりはいらん、ほれ早くせんか、せっかくの月が過(よ)ぎってしまうぞ」
使用人たちに号令をかけているのは、紫の地に金の縁取りが豪奢な長衣をまとった老齢の男。
人を使うことになれているのか、てきぱきと指示を与えて、夜のテラスに小さな酒宴の席をつくらせると、満面の笑みで振り返る。
「待たせたなヴェイン、今宵は心行くまで天界の美女を愛でようではないか」
木立の影の中に、溶けるようにたたずんでいた人影が歩み出てくる。
長身の青年。一見しただけで武人であることが判るたくましい体躯を、黒と白で彩られた正装で包み込み、歩み出る足の運びから、ゆるやかに傾げた首の動きにいたるまで、すべてが優雅で“隙が無い”。
人の上に立ち、常に“見られるもの”として過ごしている者に特有の計算しつくされた美しさが満ちていた。
男のかたわらに立った青年は、目を細め口元をほころばせる。
「これでは、どちらが客か判らんな」
「あんたが客だ。たしかに此処はあんたの……あんたの父君の庭だが、宴を開くのはわしだ」
「では、心置きなく招かれるとしよう」
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