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「きおくのカケラ」分館 銭亀(ギルガメ)用

結局FF14は休止のまま。ヴェーネスに会いたいけど…

2024'11.26.Tue
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2008'06.15.Sun
パパの日です。
頑張ってみました……玉砕って言うなぁぁぁ; orz



 オーフォド区方面から飛来したエアタクシーは、繁華街の一角ニルバス区の専用ポートへ滑り込むとゆったりとした動きで停止位置へ身を寄せる。
 すぐそばで乗降客を見守るタクシーガイドの姿だけでなく、その背後を行き交う人々の姿も映し出すほど見事に磨き上げられた扉が跳ね上がり、連動してせり出してきた銀のタラップを踏みしめて降りてきたのは一人の少年だった。
 歳の頃は13、4歳だろうか。歳の割には高い身長と整った顔立ちに浮かぶ穏やかな笑み、そして眼鏡の奥できらめく瞳は同年代の子供たちには少ない落ち着いた輝きをたたえている。
 少年は会釈するタクシーガイドに、大人びた微笑でうなづき返すと、足早に繁華街の雑踏へと紛れ込んでいった。
 
 だからタクシーは嫌なんだ。
 タクシーガイドの視線が届かなくなった頃合を見計らい、ファムランは強張っていた背筋と肩をダラケさせ、大げさにため息をついた。
 手際の悪い教師の雑用を手伝わされるなんて言うトラブルさえなければ、もっと早く学校を出ることができたし、そうすれば列車で向かっても品選びのための時間が十分取れた。
 タクシーは便利だ。使いたいときには遠慮なく使えと父にも言われている。
 しかし、タクシーに乗れば暇をもてあました運転手に何かと詮索されるし、もしもなにかの弾みで自分が“ブナンザ家の息子”であることがバレてしまうと……運転手が飛空艇好きだったりしたら最悪だ!……目的地に着くまでの間、えんえんと質問攻めに合ってしまう。
 列車の中で記録石に収めた好きな音楽でも聴きながら、目的地まで寝たふりをしているのが気楽でいい。
 再度、ため息をついて足を速めようとしたファムランの目が、ひときわ大きなショーウィンドウの中に飾られている一丁の美しい銃に奪われ引き寄せられた。
 ミスリル銀を思わせる透き通った青い銃身は、見る角度によってはほのかに緑の色をにじませ、グリップやトリガーはつや消しの銀。
 高級をうたう品にありがちな、唐草模様や輝石の象嵌などと言ったゴテゴテとした装飾は無く、シンプルな造詣のはしばしに、製作者の美的感覚の高さと機能性への追求が見て取れる。
 どこかでよく似た物を見た……と記憶をたどったファムランは、すぐに答えを見つけて笑みを浮かべる。
 そうだ、父が設計した飛空艇に似ている。
 父は船首像や飾り羽根、装飾角と言った無駄な装飾を嫌い、外装に凝る必要があるなら、装甲板や主翼そのもののフォルムを大胆に、機能をより一層高めるよう繊細にデザインする。
 そうやって完成した飛空艇は他者の設計にはない躍動感から“空飛ぶ美術品”と評され、機工師(エトーリア)の名を与えられるきっかけになった……と聞いたことがある。
 今この時にも、父は工房で次の船のための図面と計画書を手がけているはずだ。
 ファムランは名残惜しく留まろうとする視線を、ショーウィンドウから引き剥がすと、ゆるゆると行き交う人々の間をぬってリーアナ区へと踏み込んだ。
 飛空艇発着場に近いこの一角には、装身具や文房具、オートマタ・オルゴールや不気味なほど精巧な人形、陶器や金銀の食器などの小物を扱う有名無名さまざまな店がひしめいている。
 真新しい看板の前でハデハデしく客引きをする店を迂回した少年は、古びた店が固まっている裏路地へ歩みを進める。
 磨り減った自然石の石畳を挟んで、磨き上げられた木枠とくすんだガラス窓が古めかしい店構えが、魔石灯の柔らかな明かりに照らされている。
 通りを行くものが目にできるのは、ドアや窓に描かれた流麗ながら控えめな文字と、小さな張り出し窓に並べられた品のみ。だが、少年は迷う様子も無く一つの扉を押し開けた。
 コロンコロンと耳に心地よいチャイムの音と、柔らかな明りに照らされて照り輝く水晶の薄板たちの輝きが少年を迎える。もとよりあまり横幅のない店内は、両壁に置かれた古い陳列棚に場所を奪われ、残っている空間は中央の細い通路だけになっている。
 通路の奥には間仕切りを兼ねた小さなカウンターがあり、さらにその奥にはグラインダーやバーナーを備えた作業台が据えつけられている。今しもそこで天然水晶を磨いていた痩身の老人が訪問者に気づいて身を起こした。
「おぉ、ファムラン殿。よくお越しくださいました」
 うるさく回るグラインダーを止めた店主は、にこにこと人好きのする笑顔を浮かべて作業場から歩み出ると、小さなスツールを少年に勧める。
「どうされました? かけ心地が合いませんかな?」
「いえ、とても軽くてなじむので、つい外さないままうたた寝をして壊しそうになるぐらいです」
「それはなにより。では、念のため歪みがないか見せていただけますかな?」
「ええ、どうぞ」
 少年の返答に軽く会釈した店主は、長い年月の間くりかえした作業のせいで節くれだった指先で、そっと少年の顔から華奢な眼鏡を抜き取ると、明かりの下で蔓やブリッジの具合を確かめる。
 ファムランは不思議な思いで製作者の手元へ戻った眼鏡を見つめた。
 学生だからと出来るかぎり輝きを抑えた金のフレームに、西方の国で産出された透明度の高い水晶レンズ。レンズを支える枠が下方向だけになっているデザインや、素材、細かな装飾の位置など全てが父がかけている眼鏡と同じ品。
 違いは父の眼鏡は金の輝きが強く、レンズに度が入っていると言う部分だけだ。
 ファムランは目が悪いわけではなかったが、母に似た細面で優しい顔立ちを少しでも大人びて見せたかったことと、何より……自分でも子供っぽい感情だと思ってはいたが……父がかけている眼鏡が格好良く、自分もかけてみたいと切望していた。
 12歳を過ぎてアルバイトをやっても良いと許可が降り、初めてまとまった金額を手にしたファムランは真っ直ぐ父がひいきにしているこの店を訪れて、望みどおりの品を作ってもらった。
 眼鏡をかけた息子を見て、父はひどく困惑した様子だった。
『目が悪いのなら早く言わんか』
『そんなに悪いってほどじゃないよ。少しぼやける程度だけれど、悪くならないうちにかけた方が良いって聞いたから』
 つたない言い訳だったが、父はひとまず納得してくれた。
 ただ、しばらくの間は顔を合わせるたびに『度はあっているのか?』『医者できちんと調べてもらえ』『気づかんかったとは……』などとボヤかれてしまったが。
「レンズは問題ありませんね。保護はしてありますがもしも傷が入ったらすぐにお持ちください。目が悪くなってしまいますから」 店主の手が眼鏡を元の位置へと戻す。 「それで、この度の来店の目的はなんでしょうか?」
 問われてファムランは口を開いた。
 
* * *
 
 日付も変わろうかと言う深い夜の闇の中を、一台のハイヤーが高級住宅地を滑り抜けていく。
 帝都の中心部は絶えることのない光の渦で満たされているが、土地面積に対して建物の数が圧倒的に少なくなるこのウェンブル地区は遊歩道にわずかな街灯がともされている以外、天にかかる月と邸宅の窓辺からもれる明かりしかない。
 ヘッドライトとグロセアリングの輝きで、家々を囲む森林を浮かび上がらせつつ走ったハイヤーは、歴史を感じさせる重厚な邸宅へ近づくと屋上にしつらえられた橋へ身を寄せる。
 扉を開いて一つの人影を降ろした小型艇は、気安い相手なのか挨拶がわりにヘッドライトをパッシングすると軽やかに身をひるがえして飛び去った。
 飛空艇での往来が一般的になっている現在、上層に発着施設を持ち合わせている建物には、それに合わせて来客を迎えるための玄関口が作られている。
 この邸宅も飛空艇でやってきた者を迎えるための上層玄関が作りつけられていて、重々しい扉を引きあけた執事が歩み入る男に頭を下げた。
「おかえりなさいませ」
「やれやれ長引いたわ」 出迎えられた男は執事に上着を渡すと、足早に階下へ降っていく。
「食事はいらん。湯を浴びたらさっさと休む。朝は7時には起こしてくれ。それ以外は特にない」
 普段ならここで「承知いたしました」と退がるはずの執事が、めずらしく言葉を続けた。
「旦那さま、湯浴みの前に居間へお越しいただけますでしょうか? ファムラン様がお待ちです」
「この時間に? 何事かあったのか?」
 表情を曇らせた主に、執事はほのかな笑みを見せて否定する。
「いいえ。ただ本日中にお会いしておきたいと」
 釈然としない様子ではあったが主はうなづく。 「わかった」
 今度こそ退がった執事を置いて、男はまっすぐ居間へ向かう。
 厚い扉は年月と言う侵食を受けてややいびつに磨り減っていたが、細やかな手入れのおかげで美しい輝きを保っている。
「ファムラン、はいるぞ」
 軽くノックした後、扉を押し開けると、柔らかな光に包まれた居間の長椅子から慌てて立ち上がる息子の姿があった。
「父さん、お帰りなさい」
 身なりには人一倍気を使う末息子が、寝癖で髪を乱し目をショボつかせている姿に、男は困惑の声をあげる。
「どうしたファムラン? そうまでして起きて伝えたい事とはなんだ?」
「うん、これを……」
 テーブルの上に置いてあった細長い包みと1本の薔薇を、重ねて差し出した少年の表情は緊張に強張っている。
 おそらく包みだけでは、それが何を示しているのか男にはピンと来なかっただろうが、1本だけの薔薇の花は毎年、慎ましやかに贈られるプレゼントだった。
「…おお……そうか、もうその日だったか」
 うやうやしく受け取った男の表情が、とろける様な甘い笑顔に満たされる。
「そうか、そうか、これはここで開けてしまっても良いか?」
「うん」
 元気良くうなづいたものの少年の緊張はつのる一方らしく、すっかり眠気が消えてしまった瞳で父親の手元を凝視している。
 そんな息子の姿に苦笑しつつ――そう言う自分も座ることすら忘れたまま――小さな包みを解くと現れた細長いケースを開いた。
 ケースに貼られた黒に近い臙脂色のビロードの上に、蜜を連想させるしっとりと輝く金の細鎖が横たわっている。正体を察しかねた男だったが、ケースに捺された控えめな店名と紋章に、何のための品であるのかを理解した。
 金鎖を引き出し、かけていた眼鏡につけていたグラスコードと付け替えようとするが、手袋をはめたままだったのが悪いのか、繊細とは言いがたい指先が悪いのか、どうもうまく行かない。
「父さん、貸して」
 業を煮やしたのか息子が差し出した手に、しぶしぶ二つの品を乗せてやると、少年の器用な指先はあっさりと仕事を終えてしまった。
 戻ってきた眼鏡の、金の細鎖が下がった姿をしげしげと眺めていた男は、神妙な面持ちでかけなおすと照れくさそうに息子へ問いかける。
「どうだ?」
「うん、似合っているよ」
 見上げる少年の顔はあふれんばかりの笑みに輝く。見下ろしている父親の表情も同じ笑顔になっていた。
「そうか? そうか! わははははは! わしは幸せ者だ! 明日は会社中に自慢してやるぞ!」
「じ、自慢なんかやめてくれよ! 恥ずかしいッ!!」
 テレて狼狽する息子を腕の中に抱え込むと、まるで幼子を相手にするかのように軽々と持ち上げ、ゆすぶり、抱き寄せる。
「すまんなファムラン。いつも仕事仕事と、お前を放ったらかしたままの悪い父親だというのに……」
「いいよ。僕は父さんが楽しそうに仕事をしている姿が好きだし、父さんが創った飛空艇が大好きなんだ」
「……ありがとう」
 いつの間にか大きくなっていた我が子を抱きしめた父親――シドルファス――は、その身体のぬくもりと鼓動をより感じ取ろうと、目を閉じると幸福の吐息をついた。



パパシドと子ファムラン。
この日に書かずしていつ書く?!って事で頑張ってみました……玉砕って(略)!

一応、迷ったんですよねぇ。上記の話にするか、兄上の話にするか、“バルフレア”の話にするかで。
ただ、後ろ二つはチョビッと悲しいので、初FF12父の日に相応しい王道直球を。
ちなみに、SSもどきには書けなかったのですが、パパンのお古のグラスコードは、ファムランがもらって調整金具をつけて自分用にしてます。
…どこまでパパ好きなのよ、うちのファムは(w

あ、あと、地区の名前は適当に決めたモノなので本気にしないように。
  オーフォド → オックスフォード
  ウェンブル → ウィンブルドン
でございます。適当すぎ orz
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素敵すぎる
すっげー幸せな気持ちになった!
ありがとうvvvvv
蒼月: 2008.06/15(Sun) 12:19 Edit
出遅れたッ;
そちらのblogにコメント残そうと思ってたのに、後手後手に回ってまさに亀 orz
どもども、読んでいただけて嬉しゅうございます。
つ~か昨日、蒼月さんのblogを見て「!! 明日父の日だ!」となったので…。
いや、10日あたりまでは「16日がパパの日だね~」と覚えてたはずなんっすが、小王ネタを考えるのに脳内バッファが埋まってしまったようで;

しかしまぁ、毎度のことながらウチの話は前ふりが長すぎて笑えます。
同人創作に、こう言う前ふりはいらんだろうと(w
しかし、なおりそうにない性分なので、ぜひとも適当に削って、読みやすくしていただけたらと(爆)
ラストシーンは「あわせました」
OK?
ギルガメG: 2008.06/15(Sun) 13:03 Edit
寝ぼけてるのか;
>10日あたりまでは「16日がパパの日だね~」と
……15日だよ; 大ボケすぎる自分に絶望した;
2008/06/15(Sun)
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