2009'04.10.Fri
4月10日はシドの日。
と、アルケイディア・トロワの片ギリさんが書いてらっしゃったのに便乗して、本日はシドの誕生日と勝手に決定。
去年は何もできんかったので、今年こそは!…って思ってたのに orz
まぁ、毎度のことです……ホント、毎度の……(どん底)
と、アルケイディア・トロワの片ギリさんが書いてらっしゃったのに便乗して、本日はシドの誕生日と勝手に決定。
去年は何もできんかったので、今年こそは!…って思ってたのに orz
まぁ、毎度のことです……ホント、毎度の……(どん底)
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「一つ、尋ねたいことがある」
新緑の下、暖かな日差しにさそわれて一斉に開いた花々が絢爛と咲きほこる庭園の中ほど、緑の芝がおおう、なだらかな丘の上に小さな東屋が設けられている。
飛島(プルヴァマ)から切り出された、薄く青みを帯びた乳白色の”翼石”を柱代わりに、雨をしのぐためだけの軽い屋根が乗せられた東屋には、小さなベンチがぽつりぽつりと円形に配されているが、その一つに腰を下ろして、のんびりと眼下に広がる帝都を眺めやっていたシドは、問いかけてきた青年を振り仰いだ。
「一つと言わず、いくらでも問えばよいぞ」
愛想よく許可が降りたというのに、黒髪の青年は黙ってなにやら考え込んでいたが、老いた友が姿勢ごと向き直り「ほれ、」と急かしたので、ようやく口を開いた。
「今、贈り物として欲しいものは何だろうか?」
「一体、何事かね?」 シドは目を丸くするが、先ほど自分が返した言葉を思い出したのか、神妙な面持ちで首をかしげる。 「ふむ、そりゃあ一番欲しいものと問われれば神授の破魔石になろうが、そんな事を訊いとるのではないわな。リヴァイアサンの建造に予定よりも少しばかり日数がかかりそうなので、日にちが欲しいとか、もうちょっと使える技術者を寄こして欲しいとか、ドラクロアにウロチョロしとる番兵をどうにかして欲しい……などと言うのでもないな?」
上目づかいにチラリと向けられた視線に、青年はしかつめらしくうなづき返す。
「シドが個人的に望む物だ」
「個人的にかね? むぅ、別段、欲しい物は無いのぅ。そもそも、あんたからは何かと貰っておるのに、これ以上……」
突然、言葉を途切れさせたシドは、顔をしかめると大きくため息を吐き出した。
「そうか! またワシの誕生日が来たのか!! もうこの歳では嬉しくも何ともないと言うのに、あんたは今年も礼儀正しく何かくれようとしとるのかね? いらんいらん、せっかく貰った品を山積みの書類やガラクタの中に紛れ込ませて見失っとるのを知っとるだろう? これ以上、あんたの思いやりを蔑ろにしたくはない。気持ちだけで十分だ」
「では観劇はどうだろうか?」
「あんたの貴重な時間を、ワシのために浪費してくれると言うのか? いやいや、無理じゃろう? この2時間後には再び西方へ向かわねばならんあんたにそんな時間はない。皇帝への報告の合間に、こうやって顔を会わせるだけでも一苦労ではないか」
「たしかに私は同行できないが、シドに楽しんでもらえるのなら十分だ。若い頃には劇場に足しげく通っていたと聞いているぞ」
「そういう頃もあったが、今となっては一人で寂しく席におさまる気はせんよ。造船場の騒音を聴いとる方がよいわ」
よっこいせ、と声をあげて立ち上がったシドは、曇ったまま晴れない青年の顔を見上げて苦笑いを浮かべる。
「さんざん考えて思いつかなんだのじゃろう? 当然だ、ワシが欲しいものは”未来”だ。いまさら形ある物などかき集めても死ねば置き去り。処分する者が困るだけだ。あんたなら判るのではないか?」
青年の表情は和らぐどころか、さらに影を増していく。老機工師は声をあげて笑い出した。
「なんという顔をしとる? 案ずるな、もう贈り物は十分受け取ったわい。前にも言うたじゃろう? あんたとの出会いが、あんたの存在が、ワシにとって何ものにも代えがたい幸運なのだぞ。
狂人と陰口を叩かれるワシの言葉に耳をかたむけ、願いを聞き入れ、行動にまで移してくれた。あんた以外、誰もおらなんだ。誰一人としてワシを信じなかった」
過去を思い返したのだろう、機工師の表情が痛みに歪むが、それはすぐに穏やかな笑みに取って代わられる。
「ヴェイン、ワシに贈り物をと言うのなら、どうか“最後まで見届けてくれ”。 それが一番の望みだ」
「……わかった」
言葉を噛み締めるよう、ゆっくりとうなづいたヴェインは、ようやく笑顔を見せた。
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などと言いながら、この後、シドは人造破魔石を合成するために、ビュエルバ産の高品質魔石を大量に欲しがるワケです。
OKしちゃうんだよなぁ、兄上。いいパトロンだよ…(涙
「一つ、尋ねたいことがある」
新緑の下、暖かな日差しにさそわれて一斉に開いた花々が絢爛と咲きほこる庭園の中ほど、緑の芝がおおう、なだらかな丘の上に小さな東屋が設けられている。
飛島(プルヴァマ)から切り出された、薄く青みを帯びた乳白色の”翼石”を柱代わりに、雨をしのぐためだけの軽い屋根が乗せられた東屋には、小さなベンチがぽつりぽつりと円形に配されているが、その一つに腰を下ろして、のんびりと眼下に広がる帝都を眺めやっていたシドは、問いかけてきた青年を振り仰いだ。
「一つと言わず、いくらでも問えばよいぞ」
愛想よく許可が降りたというのに、黒髪の青年は黙ってなにやら考え込んでいたが、老いた友が姿勢ごと向き直り「ほれ、」と急かしたので、ようやく口を開いた。
「今、贈り物として欲しいものは何だろうか?」
「一体、何事かね?」 シドは目を丸くするが、先ほど自分が返した言葉を思い出したのか、神妙な面持ちで首をかしげる。 「ふむ、そりゃあ一番欲しいものと問われれば神授の破魔石になろうが、そんな事を訊いとるのではないわな。リヴァイアサンの建造に予定よりも少しばかり日数がかかりそうなので、日にちが欲しいとか、もうちょっと使える技術者を寄こして欲しいとか、ドラクロアにウロチョロしとる番兵をどうにかして欲しい……などと言うのでもないな?」
上目づかいにチラリと向けられた視線に、青年はしかつめらしくうなづき返す。
「シドが個人的に望む物だ」
「個人的にかね? むぅ、別段、欲しい物は無いのぅ。そもそも、あんたからは何かと貰っておるのに、これ以上……」
突然、言葉を途切れさせたシドは、顔をしかめると大きくため息を吐き出した。
「そうか! またワシの誕生日が来たのか!! もうこの歳では嬉しくも何ともないと言うのに、あんたは今年も礼儀正しく何かくれようとしとるのかね? いらんいらん、せっかく貰った品を山積みの書類やガラクタの中に紛れ込ませて見失っとるのを知っとるだろう? これ以上、あんたの思いやりを蔑ろにしたくはない。気持ちだけで十分だ」
「では観劇はどうだろうか?」
「あんたの貴重な時間を、ワシのために浪費してくれると言うのか? いやいや、無理じゃろう? この2時間後には再び西方へ向かわねばならんあんたにそんな時間はない。皇帝への報告の合間に、こうやって顔を会わせるだけでも一苦労ではないか」
「たしかに私は同行できないが、シドに楽しんでもらえるのなら十分だ。若い頃には劇場に足しげく通っていたと聞いているぞ」
「そういう頃もあったが、今となっては一人で寂しく席におさまる気はせんよ。造船場の騒音を聴いとる方がよいわ」
よっこいせ、と声をあげて立ち上がったシドは、曇ったまま晴れない青年の顔を見上げて苦笑いを浮かべる。
「さんざん考えて思いつかなんだのじゃろう? 当然だ、ワシが欲しいものは”未来”だ。いまさら形ある物などかき集めても死ねば置き去り。処分する者が困るだけだ。あんたなら判るのではないか?」
青年の表情は和らぐどころか、さらに影を増していく。老機工師は声をあげて笑い出した。
「なんという顔をしとる? 案ずるな、もう贈り物は十分受け取ったわい。前にも言うたじゃろう? あんたとの出会いが、あんたの存在が、ワシにとって何ものにも代えがたい幸運なのだぞ。
狂人と陰口を叩かれるワシの言葉に耳をかたむけ、願いを聞き入れ、行動にまで移してくれた。あんた以外、誰もおらなんだ。誰一人としてワシを信じなかった」
過去を思い返したのだろう、機工師の表情が痛みに歪むが、それはすぐに穏やかな笑みに取って代わられる。
「ヴェイン、ワシに贈り物をと言うのなら、どうか“最後まで見届けてくれ”。 それが一番の望みだ」
「……わかった」
言葉を噛み締めるよう、ゆっくりとうなづいたヴェインは、ようやく笑顔を見せた。
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などと言いながら、この後、シドは人造破魔石を合成するために、ビュエルバ産の高品質魔石を大量に欲しがるワケです。
OKしちゃうんだよなぁ、兄上。いいパトロンだよ…(涙
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