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「きおくのカケラ」分館 銭亀(ギルガメ)用

結局FF14は休止のまま。ヴェーネスに会いたいけど…

2024'11.24.Sun
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2009'03.21.Sat
なんとか…続き。
もう、自分が何を書きたいのか見失いまくり;
書き逃げだーーーッ orz

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「ラーサー殿はいくつになられたかな」
 食事を終えて談話室へうつる道すがら、シドルファスは小さな同伴者へ言葉をなげかける。ひっそりとアクビをかみ殺していた少年は、急いで姿勢を正すと年長者へ向き直った。
「8歳になります」
「そうか、たった2年というのに、ずいぶんと背も伸びてこられた。10年もあれば、ワシの背に追いついて、兄君と肩を並べるほどになるじゃろうな」
「はい! 早くそうなりたいと願っています。背丈だけでなく、武道においても学問においても、施政者の1人として兄の助けになれるような者になりたいと」
 “兄”と口にするたび、ラーサーは誇らしげな笑みを強くする。そんな少年を見下ろすシドの榛緑色の瞳もまた温かい。
「ヴェインも、優れた弟君がいて心強いことだ」
「……そうだとよいのですが」
「なんじゃ、気弱な返答じゃな?」
「僕は早く兄上のお役に立ちたい。でも、僕はまだ子供で……兄上のお役に立つどころか、足手まといになるばかりで……」
「それは仕方あるまい? ラーサー殿はまだ8歳だ。 その小さな体で兵と打ち合えば倒され、学も足りず、世界を見渡す眼も未熟だ。だからこそ、己を鍛え学ばねばならん。子供の時代と言うのは、そのためにある。たとえ過ち失敗を繰り返したとしても、許される豊かな時間なのだ。それを無為に過ごすほど愚かなことはない」
「……ドクター、僕は兄のようになれるでしょうか?」
「それはわからん。素質があるのは確かだ。だが、磨かれぬ石は石ころのままではないかな? ときにラーサー殿、ヴェインがあれほどに“強い”のは何故かわかっておられるかな?」
「“強さ”の理由?」 見上げていたラーサーの視線が、こころもとなげに揺れる。 「努力したから…ですか?」
「それもある。だがそれ以上に大事な物はな」 すっと伸ばされた機工師の指先が、ラーサーの胸の中心に軽くおかれる。 「信念だ。思い描く未来の図を成し遂げるための強い願い。それがあるからこそ、人は強くなる」
「信念……」
「折があれば訊ねてみるがいい。ヴェインが今のラーサー殿の歳で、どれほど迷い悩んだか。誰しも最初から万能ではない。苦悩の中に道を見つけたからこそ、今のあれがあるのだ」
「兄上も迷い悩んだ……?」
「ラーサー殿、貴殿が兄上と並び立ちたいと願うなら、兄上の後を追ってはならん」
「え…っ、なぜです?」
「後を追えば真似になる。真似では対等にはなれん。並び立つのなら、彼と同じ高みを見すえねばならんのだ。高みを目指して己を磨いていけば、自然と肩を並べて立っておるし、それだけの強い信念を持たぬ者ではヴェインから尊敬を得ることはできん」
「尊敬……?」
「そうだ。ラーサー殿はヴェインを尊敬しておるだろう? おなじ尊敬をヴェインから得られるように、己を磨かねばならん、と言うことじゃな」
「ドクターはお持ちなのですよね?」
「何をだね? 信念ならば持っておるよ。無くばヴェインから友と呼ばれとらんじゃろう」
「おや、私がどうかしたかな?」
 使用人たちへ指示を与えつつ、先に談話室の様子を確かめていたのだろう、行く手の扉が開かれて姿を現したヴェインが2人を室内へ招き入れる。
 毛足の長い敷物の上に、背の低い家具と寝椅子などがゆったりと配された室内は、曇りガラスであえて光を弱くした煌光石のランプに照らされて、黄昏のあいまいな輪郭に溶けている。古い住人が愛用していた紫煙の香りが染み付いた室内に、濃厚なアルコールの甘い香りが漂っていた。
「ラーサー」
 注意を促す兄の声に背筋をただした少年は、廊下へ半歩後ずさる。
「それでは、私はこれで失礼いたします。ドクター、兄上、おやすみなさい」
「おやすみ、ラーサー」
「よい夢の訪れを、ラーサー殿」
 扉が閉まりきるまでニコニコと少年へ笑みを送っていたシドは、ため息をついて歳若い友人を振り返る。
「もう少し、あんたと一緒におりたいのだろうに」
 テーブル上のグラスに、琥珀色の蒸留酒を注いでいたヴェインは眉を寄せ、渋い笑顔を浮かべた。
「しかたがない。時刻が時刻だ」
「火酒の刻をともに過ごすわけにはゆかん…か」
 注がれたばかりのグラスを無造作に取り上げたシドは、手の中で2、3度くゆらせると、しばし香りを楽しみ、一口含む。
 隣り合ったグラスを手にしたヴェインは、しかし手の中でグラスを転がすばかりで、静かに友の言葉を待ち受けている。
 目を閉じ、舌の上を滑らせた酒からにじみ出る味わいを楽しみ、少しの心残りとともに喉の奥へと流し込んだシドは深々と息をつく。
「美酒の官能に酔う、怠惰なたわむれを覚えるには、まだ早すぎるか」
「早すぎる。今のあれでは、舌を焼き戸惑うだけだ」
「ふむ、残念なことだ。もう少し歳が近ければ、楽しみを同じくする事柄も多かろうに」
 光を照り返す琥珀の水面を見下ろしていたヴェインは、あいまいな笑みのままグラスに口をつけ、さほど味わう様子もないまま飲み下すと、喉から胃を焼く熱さと共に小さく言葉を吐き出す。
「……いや、歳の差があって良かったと思っている」
「ふむ、それは……」 ヴェインのすぐ隣まで肘掛け椅子を引きずり寄せ、どっしりと腰を落ち着かせたシドは、前のめりになると、若い友人の顔を覗き込む。 「ライバルではなく、師弟……もっとはっきりと言えば、父子に近い関係を望むということかな?」
 ヴェインの瞳が見開かれ、いぶかしげな視線がシドへ向けられる。
「いや、そのように考えたことは無い」
「だが、あんたの態度は師弟に近いぞ。誤解を恐れずに言えば、ソリドールらしからぬ細やかな導きだ」
 黒曜石の瞳に浮かぶ“いぶかしさ”が探りにすり変わっていくが、見返す榛緑色はゆらがない。
「グラミス皇帝は、上流階級の親御らしく子の教育は家臣に任せていた。上の2人の兄君たちは立派な軍人になり、あんたもその道を辿った。だが、ラーサー殿は少しばかり様子が違う。外から幾人もの教師を雇い入れ、軍に染まらぬ教育を受けさせている。正直、よくグラミスが許したことだと驚いておるよ。あんたはラーサー殿に、これまでとは違う道を歩ませようとしとるのかね? 行く行くは、あんたと相対するような政敵に育て上げようと?」
 ヴェインの引き結ばれていた薄い唇が笑みに和らぐ。
「……ずいぶんと大胆な推論だな。私がわざわざ騒乱の種を撒いているとでも?」
「あんたならやりそうだと思っとる」
 みるみる表情を曇らせる若者へ、少しばかり慌てた様子でシドは言いつくろう。
「まあまて、これは褒め言葉だぞ。あんたは時代を動かせる人間だ。傍若無人に流れて行く歴史の行き先を、左右できるわずか数人のうちの1人だ。そして、ワシらがあんたを選んだ最大の理由は、あんたには何かを成し遂げようとする兆しが見えたからだ。……ああ、これでは胡散臭い宗教屋のたわごとにしかならんな!」
 青年のかたわらから立ち上がった機工師は、身振り手振りを交えながら室内を歩き始める。
「発明や発見と言うものは、インスピレーションから導き出される。インスピレーションとは、膨大な情報の方向性を読み取る中に見えてくる潮流のようなものだ。これは見る目をもつ者であれば誰にでも見て取ることができる。気づくことができる。だが、それを証明するのは至難の業だ。
 ワシは、あんたの周囲に様々な要素が……エネルギーが集まり渦巻いて、どこか一方向へ流れ行こうとしておる様が“判る”。だが、その行き先は判らん。あんたに近い目線と立場でなくては見通せんのだ。ただ、ラーサー殿が深く……核心と言っても良いほど中心におるだろうことは“判る”」
 動きを止めたシドは眉をよせ、顎を胸につけると、しばし黙りこくっていたが、突然、礼服の裾をひるがえしてヴェインのかたわらへ舞い戻る。
「これから先、ラーサー殿のために必要とあれば、ワシやドラクロアを自由に使うといい。理由は問わん」
「突然、なにを……」
 困惑する青年の瞳をのぞきこみ、たどり着いた答えを告げる。
「あんたが目指す未来のために、力を貸すのがワシの約束だ。ラーサー殿はあんたの未来なんじゃろう?」
 シドルファスは突然、突拍子もないことを言い出すことがある。
 天才と呼ばれる人々に多い論理の飛躍が原因であることを、ヴェインは重々理解してはいたが、それでも目の前で一足飛びに核心へ詰め寄られた驚きに一瞬言葉を失う。
「どうかね?」
 問いただす声にヴェインは降参する。……だが、まだ、全面降伏はできない。
「友の助力がえられるならば、これほど心強いことはない。だが、ドラクロアの内部に波風をたてることになるぞ。ジャッジの介入も増える」
「かまわん。どうせジャッジマスターの目は避けられん。あんたが望むよう、最大限に活用すればよい」
 あっさりと言ってのける友の笑顔を、ヴェインは複雑な心境でながめる。これは策があるがゆえの自信なのか? 複雑な機工を編み上げる知性とオキューリアの能力で、すべてを理解した上で私を図っているのではなかろうか?
 ふとシドの笑みが和らぎ、手の平がそろりとヴェインの頬に添えられる。ゆったりと輪郭をなでた指先が、顔にかかる黒髪の房をかきあげ、表情を明るみにさらす。
「ヴェイン、ワシはあんたに賭けた。もはや、ワシには引き返すための刻も残ってはおらん」
 機工師の骨太の手がヴェインの手首をとらえると、そのまま己の喉元へと導く。青年の親指の付け根に押し当った喉仏が、問いかける低い声音に震えた。
「試してみるかね?」
 ヴェインの手の平が老いた喉にからみつき……いたわるようにさする。
「馬鹿げたことを…、あなたらしくもない」
 年齢の割にはまだ筋肉が張っているが、柔らかくなった皮膚や、目立ちはじめた血管と筋は隠しようがない。目を伏せ、おどけたように言い捨てたヴェインは、そんな首筋へ顔をうずめる。
「試すなど、必要ない」
「そう……か」
 重みを抱きとめたシドは、おだやかな吐息とともに答えた。

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